■白い部屋の中、主に傅く獣はとても惨めで
 
 とある丘の頂上に、とても大きなお屋敷がありました。
 そこには一人の天才クラッカーなご主人様が、たくさんの美人メイドと好みな古い知り合いの執事をはべらせて楽しく暮らしています。
 執事は昔、ご主人様と幼馴染だったのですが、家でちょっと色々あってできた借金のカタによって、ご主人様の元で働くことになったのです。
 元々執事にやらしい思いを抱いていたご主人様にとっちゃあ、鴨がねぎしょってきたかのようなものです。むしろ飛んで火に入る夏の虫。
 二人はどちらもとても頭が良いので、いつも腹の探り合いをする仲なのですが、とても困ったことにご主人様は変態なので、召使いの見られたくないところも探ろうとするとってもな困った変態さんなのです。
 そんなある日、ご主人様という権利を振りかざして、召使いは男なのに、メイド服を着せるという暴挙にも出たのです。
 レヴェルが同じ二人でしたら執事はご主人様を殴り殺して逃げるところなのですが、家で借金があるので、命令には従わなければなりません。
 「ちょっ、まっ、それ当たったら確実に死ぬよ!設定だろ!?ちょっとしたキケン☆なお遊びのえろえろ主従関係じゃないぎゃああああ!!!」
 そして今日もそんな変態なご主人様に振り回される召使い、可哀想なメイド姿の執事の癇癪から朝は始まるわけです。



 「ご主人様、目をよく開いてごらん下さい。暇な貴方のために私が芸の一つでもやってやろうと苦手なナイフ投げに挑戦してやってるんじゃないですか」
 「待ってよ落ち着いてよ流石に頭の上に林檎は頭部損傷の危険があるだろ!?っていうか芸だったら俺の腹の上でいつでもやらせてあげるからっていうかむしろやってほしいうわぁああああい頬掠ったぁあああああ!!!」
 ご主人様は今日は自室の椅子に両手両足を紐で縛られて座らされていました。そこから7メートルぐらい離れて執事はナイフを弄んでいます。
 すらりとした長身の彼は、白いエプロンに黒いメイド服で身を包んでいて、膝より短めのスカートからちらちらと太腿が見えます。男の人ならどんな人でも一瞬どきっとしてしまいそうな格好ですが、執事の目は冷え切っていました。人も殺せそうです。っていうか今まさに人殺しの瞬間を迎えようとしています。
 動きやすいように腕を捲くっていて、サーカスでナイフ投げをするお姉さんがよく持っている、柄が皮製の丁寧に手入れをされているナイフをご主人様にひょいっと投げました。ご主人様の頭のすぐ横を通って、ご主人様の背後の壁に突き刺さります。
 「へんた・・・ご主人様、私にも限界というものがあるんです。私の私服をどこにやりましたか?」
 「えっ、ちょっと今何か言いかけたよね」
 「気のせいでございますご主人様。さっさと言わねぇと両目にナイフぶっさして壁に磔にすんぞごしゅ・・・変態」
 「何で言いなおすの!?・・・いや、実はね、最初に着てきたお前の私服は捨てた」
 ずがっと大きな音を立ててご主人様の頭に風穴が空きました。
 というのは嘘で、ご主人様の頭の上にあった林檎に見事クリーンヒッツしたのでした。
 ごとっ、と床に林檎が落ちます。執事はちっ、と盛大に舌を打ちました。
 「お、お見事」
 「もーちょい下だったな」
 「不吉な台詞が聞こえちゃったけどこれで終わりだよね!本当限界なんでこれ解いてもらえますか!」
 ご主人さまなのに召使いに敬語です。執事は一瞬こいつを永遠にここに置き去りにして餓死にでもさせるかと頭をよぎりましたが、流石にそれでは借金の返済もできないので解いてやることにしました。
 「まったくどうしてこうも冗談が通じないのかな軋騎たんは」
 「他人が風呂に入っている間に着ていた服を捨てメイド服を用意することを、俺は冗談だなんて認めない」
 「あっ。痛い痛い。頭蓋骨潰れる。ぐしゃってなるぐしゃってなる。謝りますんで手を離してくださいいたたたたた」
 ぎりぎりと片手でご主人様の頭を鷲づかみにして上に引き上げながら圧迫します。ご主人様はもう威厳の欠片も無く謝り倒しました。
 「本当、あの、式岸さんこの設定分かってる?主従関係の危ない、えろえろ話のはずなんだけど」
 「俺が知るか」
 絶対零度の声音で執事は床で頭を押さえつつ蹲るご主人様を見下します。
 実を言うとご主人様のその位置から執事のスカートが覗けるのですが、言うときっと蹴られるのでご主人様は無言で「そうだね」と返事をしました。ここだけの話し、実は蹴られても良いとか思っちゃってますご主人様。
 このメイドと少し離れたところに住んでいる蒼い美少女のお嬢様に限り、ご主人様はMでも良いなぁと思っているのです。
 ですがこれだけで済むわけがありません。なんたってご主人様は変態なのですから。
 そんなメイド姿の執事がなんでこいつの下で働くことになっちまったんだろうと絶望に打ちひしがれていると、部屋の扉からノックする音が聞こえてきました。
 「ご主人様、お客様がいらしております」
 いつもお茶を運んでくる健気なメイドの声が届きました。
 いぶかしみながらご主人様が返事をすると、扉が開き、とても綺麗な真っ赤な女性がばたん、と大きな音を立てて入ってきました。
 彼女はメイド服姿に身を包む男前な執事に目を留めるとあら、と声を上げます。
 執事は女性を見てすぐさま窓から飛び降りて逃げようと身を翻しますが、するりと首に腕を絡められ、逃げ場を封じられます。
 「よぉ。何だ面白い格好してんな軋識。あたしも着るからペアルックで写真取らない?」
 「潤・・・」
 ひきつった声を上げてメイドは身を捩りますが、さらに女性はぴったりと身を寄せてきました。
 そしてメイドの腰に右手をまわし、左手をするりとスカートの中に潜ませます。
 「ひっ」
 「兎吊木なんかに触らせるのもったいねぇなぁ・・・今からでも遅くないからあたしに乗り換えない?」
 「はっ、あっ・・・やっ、やめ、」
 出会い頭からこれかよ!!と心の中でツッコミを入れつつ、執事はずるずると後退します。そしてついに壁に背がついてしまいました。
 「ちょ、待ってよ!俺置いてきぼり!?」
 「あ、居たのか変態」
 「相変わらずだね強欲女」
 ご主人様が声を荒げても女性はとっても余裕です。ご主人様と険悪ムードでもメイドを苛める手は緩みません。
 下着の上から性器を撫で上げられてメイドはびくりと肩を震わせます。
 「うぅ・・・・・・」
 「んー?もう参っちゃった?っていうか下着まで女物だとおねーさん興奮しちゃうな」
 「も・・・もうやめ、ろ・・・」
 「でもイきたいデショ?こんなに早くおっ勃てるなんて軋識ちゃんったら淫乱ー」
 れろ、とメイドの耳を舐めてやるとびくびくと太腿が痙攣しました。右足を執事の足の間に入れて無理やり立たせ、ぷつぷつと胸のボタンを器用に片手で外していきます。
 「こんなにイヤラシイ子に育っちゃって、双識くんや人識くんは悲しむかもねぇ。まったく、ご主人様に足腰立たなくなるまでヤられちゃうのかな?」
 「ひっ、いっ」

 「お楽しみの所悪いけど」

 突然、横からご主人様が女性からメイドをひっぺがしました。
 ふらふらとメイドはご主人様に引っ張られるがままに倒れこみます。
 「これは、俺の、なんだけどな」
 「・・・・・・・・・・・・何?物扱い?」
 「いや、いやいやいやいや。物扱いとかそういうのじゃない。そういう次元じゃない。
 軋騎は俺のだから、手出しをするなと言っている」
 にこりと笑いかけ、ご主人様は荒く息を吐くメイドの頭を撫でます。
 「それで何の用かな、ミセス。まさか俺のものを取りにきたというのなら、どうかと思うけれどね」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふーん。何だ。 そういうの? じゃあ、良いよ。あたしは今日は大人しく引き下がりますー」
 女性は両手を上げて扉に向かって帰っていきます。
 扉の手前で立ち止まり、くるりとご主人様たちに向かい合いました。
 「取引のことは後程なんかやるよ。でも、軋識、あんたも大概良い趣味してんね」
 「だろう?」
 にやりとご主人様は笑って見せます。
 「物扱いされるのが大好きだからなあ、軋騎は」
 執事はぐっと声をこらえ、俯きました。
 女性はそれを少し見つめて、何も言わずに扉を開けて出て行ってしまいました。
 少しの間、ご主人様と執事は立ち尽くしていましたが、ご主人様が手を下半身に伸ばしてきたので腕の中から逃れようと手を当て、下がります。
 「軋騎」
 執事の肩がびくりと強張ります。ご主人様は隙を見てお姫様抱っこをすると、己のベッドまで移動して、ベッドの上に執事を降ろしました。
 「うつりぎ」
 「口直しに俺はどうかな?」
 「ほざけ・・・」
 「じゃあ抵抗しなかったお仕置きで」
 ちゅ、とお姫様にするように手の甲にキスを落として、ご主人様はにこりと執事に微笑みました。





 「んっ・・・・・ぅ、っく、は・・・・」
 「エロい眺め」
 うっとりと笑いながらご主人様は執事の性器に舌を這わします。片手で太腿を撫でながらもう片方の手で執事の尾孔をつついたり引っかいたり執拗に弄繰り回しました。
 執事はといえば、ご主人様に逆さまに上に乗っかられ、目の前に突き出された怒張したそれをどろどろに舐めていました。
 いわゆる69と言われるものです。
 ご主人様の頭の方に、執事の下半身が来て、ご主人様の下半身の方に、執事の頭がくる形です。
 とりあえず舐めないとちょっと強めの媚薬飲ました後目隠しに拘束してローターつっこんで一日中放置しちゃうぞ☆と言われたので、吐き気を催しながら喉奥まで入ってこようとするそれを、(慣れないですが女性相手には結構知識が豊富なので、)執事は頑張って奉仕します。
 「ぅぐっ、うっ、ぁああっ、ぁ」
 下半身も絶え間なく快感が襲ってくるので足をがくがくさせながら執事は甘噛みしたり吸ったりしつつどうにか早く終わりますようにと願います。
 「一回出すよ」
 「っ!?はぁ?・・・・・・・っく!」
 驚いて顔を離した瞬間、びゅるびゅると勢い欲ご主人様の性器から白い白濁液が飛び出ました。それは少しだけ執事の顔にかかりましたが、殆どメイド服を汚しつつ、執事の胸元にぼたぼたと落ちます。
 額の汗を拭いながらご主人様は執事の上からどき、執事の足の間に座り込みました。
 「いやー参った参った軋騎ったら上手いんだものなぁ」
 「ふざけろ」
 とても殴りたくなりましたが執事も息絶え絶えです。性欲処理なら終わったからもう良いかな、と思った矢先、尾孔に冷たいものが塗りたくられました。
 「ひぃっ・・・・ばっ、何やってんだ・・・もう・・・・・・っ」
 「軋騎イってないだろ。それにご主人様の命令は絶対だぜ」
 にやりと笑ってご主人様はローションを孔の中にたっぷりと塗りこめました。ついでに性器にもだらだらとかけてやります。
 ひんやりしたそれが肌に掛かると執事は敏感になっているのかびくびくと体を痙攣させて小さく悲鳴を上げます。
 指を三本中につっこみ、覚えている前立腺を軽く引っかいたり、指の腹でぐりぐりとおしてみたりすると、面白いぐらいに執事は声を上げます。
 「あっあああああっ、やぁっ、そっ・・・・・ひっ」
 「偶には女装も良いよなぁ。女体化とかできたら一番良いんだけど」
 「はっ、あああっ、やああっ、ばっ、かなっことっ、っんんっ」
 「入れる。我慢できないから」
 「ふぁ・・・・・うつ・・・」
 ちゅっ、と一度だけご主人様は執事の瞼にキスを落として、ローションでどろどろになったそこにずっ、とご主人様のそれが突き入れられました。
 「ああああああっ、あっ、やぁあああっ!」
 「ん、熱・・・・・」
 がくがくと震える執事をぎゅうと抱きしめてやり、ご主人様は行き場を無くす執事の手を指を絡めて握ってやりました。






 そういうわけで丘の上のお屋敷にすむ主従のお話はここで一旦終わります。
 これからもそんな変態のご主人様に振り回されなんか色々やらされちゃう羽目になるであろう執事には同情を禁じえませんが、ご主人様に愛されているのでしょうからきっとだいじょうぶなんじゃないでしょうかと思いつつ、地下室にあるであろう拷問室がいつか使われなければ良いと願って閉幕とさせていただきます。
 ・・・・・・・・・・・めでたし?
2006/8・17


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