■正解に飽きるのはきっとすぐなのだと
 幼い手足がベッドの上に投げ出されてるのを見下ろして、俺は小さく笑った。お稚児遊びをする人間の気持ちって、こういうのなんだろうか。やけにか細い手足。普段のあいつとは思えない、筋肉も、(当たり前だけど脂肪も)禄についていない、ただただ華奢な体だった。
 殺人鬼であるあいつのノースリーブが、小さい式岸が着るとワンピースのようだった。俺の視線に耐えかねて、式岸が寝返りを打った。シーツに皺ができる。
 「何で、見る」
 敵意むき出して、式岸は俺を睨みつけてくる。犬か、いや、猫だなぁ、なんて俺は思いながら、「可愛いものは見たくなるだろ」と平然と答えた。あいつと同じ反応のように、式岸は「はぁ?」と変な声を上げた。少年であるせいか、微かに上ずっている。笑えた。
 「あんた、何だ。誰だ」
 「俺の名前は兎吊木垓輔。垓輔お兄ちゃんと呼ぶといい」
 「なんで」
 「俺が喜ぶ」
 俺の返答に顔を顰めて、式岸は俺に背中を向けた。どうやら俺を無視するつもりらしい。ワンピースのようになってしまっているシャツでは心細いだろうに、俺に何か進言するのが嫌なのだろう、じっと堪えていた。
 羞恥という感情がないんだろうか?
 


 昼間に式岸のマンションを尋ねると、無用心にも扉が掛かっていない状態だったので、俺はどうどうと中に侵入してみた。いや、一応言っておくが、チャイムも鳴らしたし声も掛けた。だが返答は無かったのだ。(いや、だがここで言ってしまうと鍵が掛かっていても入るつもりは満々だったけれども)
 不審に思いながらも中に入ってみれば、式岸の私室にあたる部屋にだけ明かりがついているのを見つけた。俺は当然と中に入ってみて、少しだけ驚いた。
 几帳面な式岸のベッドの上、150cm以下であろう身長を縮ませてじっと身を潜めている少年がいたのだ。
 「ふむ、隠し子かな?」
 「・・・・・」
 にやにやと笑う俺の視線にたじろぎながらも、シャツ一枚という魅力的な格好のまま、少年は逃げも隠れもしない。これが式岸の幼いバージョンだったら面白いな、と思った。
 「母さんは今いないぜ」
 「うん?お母さんがいるのかい」
 じろじろと少年を観察する俺の視線の向こうで、少年が吐き捨てるように呟いた。久しぶりに他人から家族事情なんて聞いたな、となんだか新しい感覚に胸が高鳴る気がする。
 俺の不思議そうな問いかけに顔を顰め、少年は「母さんに用じゃないのか?あんた、母さんの愛人か?それとも新しい父親なんて言うんじゃねぇだろうな」と初対面相手に酷い口調で言い返してくる。
 「もしも俺が君の新しい父親なら、後で今の口の聞き方を訂正させとくよ。強気は結構好きだけど、どちらかというと子供は従順な方が好きだからね。君が女の子であれば何も言うことはないけれど、それぐらいの口の聞き方はもっとクールな大人になってからのほうがいい」
 「・・・・・・」
 俺の言葉に益々顔を顰めて、少年はそれからじっと黙りこくってしまった。しかし少しは警戒を解いたのか、手足を伸ばしてベッドに座った。年齢は大体、12、13歳ぐらいだろうか。成長期にはもう少し経たなきゃいけないな、とぼんやり思う。
 「君、名前はなんていうんだい」
 「軋騎だ」
 その答えに満足しながら、俺は「苗字は?」と聞きなおす。
 「式岸」
 そんなこんなで、冒頭に戻る、といったところだ。

 「俺のことを新しい父親か愛人かなんて言うんだから、君のお母さんは浮気癖があるみたいだね」
 「うるせぇな」
 俺の言葉に、それでも否定をしないところは確かに式岸らしい。どうやら、この小さな式岸は過去の式岸というべき存在のようだ。過去の式岸。こういうことを言うとなんだかチームの誰かに反感を買いそうだな、と思う。
 「座っていいかい?エレベータが嫌いだから、ここへくるにも階段を使ってきていてね。打たれ強いと自負しているが、体力はないんだよ」
 式岸は沈黙したまま、伸ばしていた足を引っ込めた。こんなに広いベッドなんだから、別に引っ込めなくても座れたのだけれど。
 俺がベッドに腰を下ろしても、式岸は俺から視線をけして離さない。警戒心が強いのは昔も今も変わらないな、と思う。いや、幼い頃からこんなに警戒心があるから、今もあるのか。
 「あんた、何なんだ?何しに来たんだ?・・・・・・あと、できれば、ここがどこかも、教えてもらいたいんだけど」
 最後は言うか言わないか迷っているようだったが、違うことにも不安に思っているようでもあった。ああ、と俺は納得しながら、努めて笑顔で接する。
 「ここは京都だよ。京都がどこか分かるかい?まぁ細かい場所を教えても分からないだろうから地名は言わないが、マンションだよ。8階にあたる。部屋名は言う必要はないかな。ワンフロア貸しきってるから」
 「・・・・・・・ワンフロア・・・」
 突飛な言葉に式岸は少し時間を掛けて、え?と目を見開いた。特に驚く所は無いと思うけれど、まぁいいか。
 「そして、今年は2001年だ。この意味がわか」
 「はぁ!?」
 台詞を途中で切らないでくれ。
 式岸は途切れ途切れに、「に、にせん、いち?」と俺の言葉を復唱した。ふむ、予想以上の驚き具合になんか楽しくなってきたぞ。
 「で、このワンフロアは2001年の俺の同僚、式岸軋騎という人間が所有しているんだよ、軋騎君」
 「し、しきぎし・・・」
 式岸は呆然としながらじっとベッドを見つめ、しばらく沈黙してからゆっくりと頭を起こし、
 「嘘だよな?」
 逃げた。
 「はっはははははは!あははははは!はっ、はははは!」
 爆笑。
 可愛すぎる逃避に全俺が笑った。
 げらげらげらげらとしばらく俺は笑い続け、ようやく落ち着いてから、「最高だ」と式岸を褒め称えた。
 「最高、素晴らしいよ式岸軋騎。昔のお前がこんなに楽しい奴なんてしらなかったよ。ふふ、くはははは。『嘘だよな』ふふふははははは!」
 そろそろ小さい式岸がドン引きしはじめてきたから、笑うのをやめる。ああ、腹が痛い。
 そういえば――――この頃の式岸はもう既に殺人を犯しているのだろうか?いや、それはないな。愛人やら不倫やらやっているらしい母親なんて一番最初に殺しがりたがる奴だ。
 「なぁ、おい。・・・いや、笑って悪かったよ。唐突に笑い出す病気なんだ。気にしないでくれ」
 不審気に俺を見てくる式岸になるだけ優しく微笑んで、とりあえず核心に踏み込んでみる。
 もしも――――俺の行動によってこいつが殺人鬼に変貌したなら笑いものじゃないか。それこそ最高だ。今日はどうやら神が生まれたらしい。
 「君、なんでシャツしか着てないんだい?」
 「・・・・・・、は、何を、今更」
 そう。今更すぎる。だが、俺は先ほどこの子供足を伸ばした瞬間に、純白のシャツの下から覗いた肌にあるものを発見したのだった。
 俺は痩せぎすの子供に覆いかぶさり、大人版で既になれた動きで子供の両腕を後ろ手に一纏めにして掴み上げた。弓なりに体をそらせて動くことが不可能になった式岸を背中から抱きかかえ、空いた片手でワンピースのようなシャツを捲り上げる。
 「・・・ふぅん」
 「ぐっ、あっ」
 式岸の腹には打撲痕があった。暗い青色が肉の禄に付いていない腹を色づかせている。一応ボクサーパンツを穿いているが、色素の薄い腿には赤い鬱血痕がある。分かりやすいキスマークだ。
 「この打撲痕は君の母親が?」
 「っ・・・!」
 忌々しげに俺のことを睨み上げてくるが(相変わらず鋭い眼光に、俺はうっかり背筋が凍った。将来殺人鬼になる少年は昔からそういう空気があるらしい)、首を振って否定することは無かった。素直なのはいいことだ。
 「じゃあ、こっちは?」
 俺が細い太腿を掌で撫で上げれば、「離せ変態!」と叫んでもがく。可愛らしいことだが、幼い式岸は俺でもなんとか抑えられることができた。殺人鬼でないせいか、動きに本当の殺気がない。少し物足りないな、と俺のM心が疼いた。(ちなみにここは笑うところだ)
 「お母さん?」
 「そんなことあるか・・・!」
 「じゃあ義父さん?それとも、愛人さん?」
 「忘れた・・・!」
 式岸は少し笑っていた。素直でもこういう捻くれているところも変わらない。いいなぁ、と俺は思う。
 「まぁ落ち着けよ軋騎君」
 「じゃあ離せ!」
 「それはできない。いいことを教えてあげよう。俺はね、実は未来の君と付き合ってるんだよ」
 式岸の動きが止まる。睨み上げていた目が、少しの間を開けて見開かれる。瞳孔が揺らめく。
 「だから、過去だといえど、自分の恋人がどこのどいつかも分からない人間にやられているという行為に対して、はぁ、そうだったのか、で済ませられるほど、俺は寛容じゃないんだ」
 俺は溜息を吐きながら、式岸の胸まで捲り上げていたシャツを下ろす。体を密着させるように抱きかかえれば、腕の拘束を緩めずとも、式岸の腕があまり痛まない格好になる。警戒心を一瞬緩めた式岸の頭を優しく撫でながら、俺は式岸の小さな耳に唇を寄せて、そっと囁いた。
 「君が元居た場所に戻ったら、君の体に触れた人間を殺すといい」
 「・・・・・・・・・なに?」
 言葉が理解できない、と問い返された、心の底から不思議そうな言葉に苦笑を洩らしながら、俺は式岸の拘束を解く。式岸は拘束が解かれたというのに逃げることをせず、その場で上半身を捻って、俺と視線を絡ませた。純粋だな、と俺は心の中で笑った。
 「触れた人間、となると、君の未来の家族も死線も殺しかねないかな・・・そう、君にとって不快な存在ならば、殺すといいよ」
 「なに・・・を、馬鹿な。そんなことを許されるわけない、」
 「俺が許してあげよう」
 俺は笑顔で言い、ぼんやりとする式岸をベッドに押し倒した。顔を寄せて、式岸の黒い髪を優しく撫でれば、式岸が段々と体の硬直を解いていく。動物を馴れさせれいるようだ、と俺は笑った。
 「そして、将来君が出会うであろう家族達も、君が崇拝する蒼色も、君の全てを許すよ。まず、世界で一番最初に、俺が君を許してあげようじゃないか」
 「・・・・・・」
 式岸はどうすればいいか迷うように、言葉を無くして視線を空中へ這わせた。俺は問答無用で、式岸の唇に己の唇を重ね合わせる。ぎくりと強張る軋騎の体に苦笑を洩らしつつ、柔らかな唇をこじ開けて舌先を歯列に這わせた。がっちりと噛み締められている小さなつるつるしている歯の表面を辿るように舌で舐めれば、抱きしめる体がぴくっと動いた。
 足のキスマークを見るからにして犯された可能性は高い。キスはどうだろうか。性犯罪の大人は雰囲気より自分の欲望を納めることに夢中だから、下半身にしか興味がないらしい。
 「ん、ふ・・・・・・ん」
 息苦しそうに呻き声が上がった。随分と可愛らしい反応である。いつも強情な式岸相手(いや普通に可愛い女性も相手にしているけれど)(子供相手というのはやはり何か違うもんだな、と思う)だからなんだか心がむずむずした。酷くやばいことをしている気分だ。
 まぁ、いいか。死線相手にならこれぐらいはまだやってる。
 力が抜けてきたのか、歯列を割ることに成功し、式岸の舌に自分の舌を絡める。唾液が零れて、式岸の紅潮してきた頬を伝っていく。ぐちゃ、と水っぽい音がして、ふ、むぅ、とか声にならない音が式岸の口から度々上がる。舌を噛まれない危険性が低いというのはいいことだ。(・・・やっぱり少し物足りない気もするけれど)
 十分口内を嘗め尽くして口を離せば、ぼんやりした目で見られた。はふ、と小さく息が上がっている。そんな、これだけで・・・!と子供の神秘に愕然としそうになったが、式岸の細い腕が俺の白スーツにしがみ付いているのに気がついた。
 ・・・夢中になっていたのは俺もか・・・。
 苦笑を洩らし、「ほらほら、一回離して」式岸の手を離させる。ジャケットを脱いで、ベストとワイシャツ姿に。ベストはまぁ・・・いいか、と割愛。ネクタイを緩めて、ぐったりしている式岸にふふふ、と笑いかける。
 「気持ちよかった?」
 「・・・・・・・・」
 まぁ、答えないよな、と思いながら再び式岸の上に覆いかぶさると、夢見心地の気分なのか、ぼんやりとしたままの顔で、小さく「うん」と答えが返ってきた。
 ・・・・俺は自分が陥落する音を聞いた。
 「未来の・・・将来の俺は」
 「な、なにかな?」
 うっかり声も上ずった。
 「あんたとよくこういうのをするのか?」
 「・・・まぁね。君の将来はとっても酷い奴でね。鬼畜なんだよ。マゾの癖に。だから君みたいにあまり可愛らしい反応を見せてくれない。まぁ、そういうところも好きなんだけどね?・・・実を言うと、今日はこういうことをしに来たんだ」
 「こういうことって?」
 「他にいろいろ、エロいこと」
 俺の返答に口ごもり、式岸は沈黙する。・・・危ない危ない。これ以上なにか可愛らしいことをされたらやばい。
 「・・・・・・・その、将来の俺って、あんたとそういうこと、するんだろ?」
 「まぁ・・・最初は合意ってわけでもなかった気もするけどね」
 式岸はたっぷり沈黙してから、よろよろと2本の腕を俺の背中に回してきた。えっ・・・・・・・・ちょっ、まっ、待ってくださいよ奥さん。(一瞬式岸が元に戻ったら人妻プレイとかいいなぁとか思ってみたりした)
 「・・・・・・・・・・・俺にはできないか?」
 ちなみにさっきのプレイについての思考は俺の理性と共に散った。
 そりゃもう桜並に。

 薄い胸板を飾るピンク色の突起に苦笑いを零しながら、啄ばむように唇だけで突起を挟む。ひくりと痙攣する幼い体を愛しく思いながら、体を絡めてしがみ付いてくる式岸の体を微かに浮かせ、肉付きの少ない小さな尻を撫で回せば、背中に回された手が強くベストを握るのが分かった。羞恥心はあるらしい。
 「その愛人にはやられたのかい?」
 「な、なにを?」
 式岸が震える声で問い直してくる。
 「ここに」
 「ひっ、やぁ・・・!」
 尻たぶを割って、下着越しに幼い後孔を指先でぐりぐりと押しながら揉んでみる。手から逃げるように、もっと俺の股間に式岸の股間が押し付けられて、もうこの子は狙ってるんじゃないだろうかと本気で思ってしまった。
 ちゅ、と式岸の乳首に口付けを落としながら、ボクサーパンツの脇から手を差し込み、直に尻を揉む。あー・・・電車で今度痴漢してみようかな。(誰を?なんてのは今更愚問だ)
 小さな窄まりに指の先端だけを差し入れてみると、ぎくりと体が強張る。素直でいいなぁ、と思った。
 「男の性器突っ込まれるんだよ」
 「んっんん・・・・!はっ・・・」
 ふるふると震える式岸に口元が自然に緩むのを感じながら、下着のゴムを下にずり下ろす。ぴょこりと現れた、既に勃起している小さな男性器に声にならない歓声を上げそうになるのを堪えながら、俺の下でぶんぶんと顔を振る式岸に苦笑を洩らす。
 「じゃあ、何されたんだい?キスだけじゃないだろ?」
 「ふっ・・・ふ、太腿の間に、その、チンコ挟めさせろって、言われて」
 ・・・・・・うわーい俺犯罪者ー。
 少年の口からたどたどしく言われた言葉に頭の血管が切れるかと思った。なんというショタの威力。今度式岸にも言わせよう。
 「じゃあ、俺は入れてもいい?ここに」
 優しく問いかければ、泣きそうな顔で「きたない、むり、こわい」とぶつぶつ呟かれた。汚いというのが俺の息子だとしたら軽くショックだ。ちゃんと洗ってるから心配するな。
 「入れたら気持ちいいから」
 「・・・本当に?」
 まぁ最初は・・・まぁきついかもですが。ちゃんとローションも用意してきたし!
 「大丈夫大丈夫」
 「・・・・・・・キス」
 はい?
 「キスしながら、だったら、いい」
 ・・・・・・・・。
 ・・・・・・・・・・・・。
 終わった・・・・・・・・・俺の人生・・・。
 この子本当に式岸だよな?もしも別人だったら俺どうしようね?っていうかこんな子が今の式岸になるなんて、ほんと考えられないんですけど・・・!
 一人悶絶する俺を放置し、式岸はじっと黙って俺の返答を待っていた。俺とのキスがそんなによかったのかい・・・。
 俺はなるだけ優しく笑って、式岸の唇に自分の口を押し当てた。まるで睦言みたいに。俺は一体何をやってるんだろうね・・・。
 キスをしながら自分のベルトを外し、既に完勃ちの息子を解放する。横に置いていたジャケットのポケットに入っているローションを取り出し、式岸の下半身と自分の下半身が重なる場所にセットしてから、自分の性器にぶっかける。零れたローションが式岸の性器に続いて零れると、冷たさにびくびくと式岸の体が震えた。
 ズボンのポケットに入れておいたゴムを手早く自分の息子に装着して、(流石に子供相手に生でやるような度胸は俺にはなかった)式岸の下半身にかかったローションを手に馴染ませながら蕾に差し入れる。
 「ふっ、んん、ぐ・・・!?」
 小さくて狭い、式岸の幼い体は大人版より格段に別物だった。これ、入れたらマジで喰いちぎられるんじゃないかというほどにぎゅうぎゅうと締め付けてくる。体内であるせいかとても熱く、俺の指を押し出そうと収縮を繰り返す。うん、ここ、気持ちいいんだろうなぁ。
 順々に指を増やし、指でもよく入るもんだと感心しながら三本の指を拡張するようにばらばらに動かす頃には、式岸もキスから離れてとにかく喘ぎ声を上げ続けるだけだった。
 「ぁあっん、はっ・・・やぁあ」
 「嫌かい?」
 「んっんんっ・・・・やっじゃ、ない・・・!」
 それでも式岸は俺に縋ったままだ。俺は苦笑しながら、小さな窄まりから指を引き抜いた。ぐちゃ、と音を立てて引き抜かれた指をはっ、はっと荒い息を吐きながら見て、式岸は今から入れようとする俺の息子を見て腰を引いた。無言のまま、首を振られる。 
 「でも、欲しがってる」
 「んっ・・・!」
 式岸の蕾は新しい蜜を望んでぱくぱくと涎を垂らしていた。俺の息子の先端を押し付けるだけで、物欲しげにひくつく。俺がそれだけで満足しかけると、式岸は顔を真っ赤にしながらゆっくりと腰を押し付けてきていた。にゅるにゅるとローションのせいで式岸の孔に上手く俺の棹は入らない。
 「挿れて欲しい?」
 「・・・・・」
 こくりと式岸の顎が上下する。
 「頼んでよ」
 「・・・・・・・・・」
 式岸はぼーっとした顔のまま、どうすればいいのかしばらく考え、普段の口では死んでも言わないであろう言葉を吐いた。
 「あんたの・・・チンコを、俺の中に、いれてください」
 「・・・・・・・・」
 きみ・・・本気で誰ともやったことないんですか?口から血をだしそうになった。
 そして台詞がストレートすぎるだろ・・・!
 俺はそうツッコミするのと裏腹に、既に台詞だけで達しそうな息子をずぶりと式岸の中に突き入れた。高い鳴き声と弓なりに引き攣る体。
 「ふぁあっ・・・あっあぁあ、あっ・・・!んっふあぁ!」
 ごりごりと音でもするかと思った。じゅぷじゅぷと棹を出し入れするたびにローションと腸液がいやらしい音を立てる。俺の息子の先端が式岸の腹の奥まで犯すのに、ただひたすら欲を初めて知りえた子供は産声を上げるかのような勢いで甲高い恍惚の悲鳴を上げた。
 「はっ、ぁあ、ぁああん!やぁ、や、おなか、いたいっ・・・っぁ!」
 青くなっている腹部をそっと撫でれば、はぁはぁと荒い息遣いを立てながら、ちょっとだけ式岸が笑った。淫靡な笑みにくらくらしながら、式岸はただ声を上げる。
 「んっぁ!あっ、あつい、・・・!」
 ぎく、と式岸の表情が強張る。ごりごりと肉欲を押し付けながら、汗で張り付いた髪をそっと避け、俺は首をかしげて問いかけた。
 「どうか、した?」
 「やぁ!ぬっ、ぬいてっ!はっあっ、なんか、出る、でちゃ、ぁっはぁあ!」
 がくがくと震える式岸に苦笑を零しながら、ぷるぷると震える式岸自身をちらりと見て、「出して良いよ、」と笑った。
 「おしっ・・・あ、あ」
 「おしっこじゃないから」
 ぽんぽんと頭を撫でてやると、目尻に涙を溜めながらはっ、と一度大きく息を吸い込む。式岸の体がびくびくと震えた瞬間、勃ちあがっていた小さな性器からびゅるびゅると白濁した液体が飛び散った。同時に内壁がきゅう、と締まって、同時に俺も果てる。ゴムの中に入ってしまった精液に嘆息しながら、俺はゆっくりと息子を式岸の中から引きずり出した。
 「・・・・・・・気絶した?」
 問いかけても返事は無い。ぐったりとしている式岸は重く瞼を閉じており、起きる気配は無い。
 ・・・・とりあえず色々疲れたし、寝てしまおうかな。
 起きたらどうせ全てが元に戻っているだろうし――――まぁ夢オチというオチだってあるし。とりあえず大人の式岸に、小さい式岸の名台詞を言わせて見ることから始めよう。
 そんなことを思いながら、俺は式岸の体を抱きしめて、どろどろと濁った睡魔に体を預けることにした。
2008/4・20


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