■お題21から25まで
はじまりはじまりで終わる 物語(玖渚友)

目が覚めた瞬間には、すでに終わっていた。
終わっている世界。終わっている未来。そして終わっている私。
青い部屋で青い彼女は目だけを動かす。
ああ―――――、失敗した。

「私・・・生まれちゃった・・・」

泣きそうな彼女は始まり、そして終わった。



マザーグースを愛した女(赤神イリア)

夢が好きだ。何を思うともすべては溶けて失せる。
「・・・・・・・・知ってる?マザーグースの歌で、こんなものがあるのよ」
どうでもいいと、少女は言った。それもそうだとも思った。
赤神イリアは、目を閉じる。
だらしの無い男は、どこが見つからなかったのだろうか?



世界征服すら出来ないのなら僕を征服しようなんて想うことすら無意味だと想わないかい?(想影真心)

「立て」
命令してくる白い白衣の男を真心は橙色の大きな瞳できょとんと見上げると、不思議そうに首を傾げた。
「何するんだ?俺様でできることなんて、お前には無いと思うんだけど・・・」
「五月蝿い、喋るんじゃない。・・・私は、お前を使って、ここから逃げてやる。そして、お前の力で、のし上がって―――」
真心はそこでふっと、微笑んだ。
慈母のようだった。
「世界すら手におえないお前なんかに、俺様はどうせ扱えないよ」
「う、うるさいっ」
男は激昂したが、次の瞬間、背後から静かに射殺された。真心は、男が血だらけになって床に伏すのに、顔色も変えずに見ていた。
 興味は無かった。そしてまだ、終わりはこない。



掲げた手は血塗れでした(零崎双識)

どうして己が迫害されるべきなのか、双識は理解できなかった。
何故殺してはいけないのか、何故、殺されなければならないのか。
搾取されるべきは己たちではない。己たちは、生まれてくるべきを持って生まれてきたわけではないのに。

暗いところから出て、光に溢れる世界でやっと気がついた。
(両手についた赤は染み付いていて)



希望の宿る場所(浅野みいこ)

人を殺すことしかできないと思っていた。
人を殺すことでしか、生きられないと思っていた。
世界に、己は一人だけだった。
剣客に必要なのは、敵だけなのだ。
草鞋はぼろぼろにほつれ、汚れ、足を痛めてもそれでも歩く。
どこでも良かった。
希望のある場所など、あるわけが無い。
住めば都だ。
たった一つだけ願う。
私を、もう   (一人にしないで)
2007/7・12


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