■ブログ短文集
(七花と七実姉さん)
家族で住んでいる小屋の裏側を、木製の鍬でがつがつと掘り続ける弟の背をぼんやりと視続けながら、七実はそのむき出しになった広い背中の筋肉が脈動するのから視線を外さなかった。
規則正しく動くその焼けた背中が、いつのまにか地面の下まで下がり隠れてしまったのに、やっと気づいて頭を上げた。弟は「これくらいかな、」と呟くと、軽々と地面上に上り、じっと動かない私をきょとんとした顔で一度見つめた後、小屋の中へと姿を消した。
昨日父を殺した弟の顔も、同じくあのように無邪気だっただろうか?
―――――思い出せない。
ふう、と似合いすぎるため息を吐きながら、そっと掌を頬へと添えてみると、丁度七花が父親の遺体を担いで小屋から出てきた。筋骨隆々といった風な父の死体は、それよりも細い、鍛え上げられた七花の肩上でぐったりとして動かなく、そのシュールな風景に少し笑いそうになった。
七花はいつもののんびりとした足取りで父を持ったまま掘った穴へと歩んで行くと、一人で下ろすが故か、少し粗雑に死体を穴へと落ろした。予想よりも少し大きめに掘ったのだろう、その穴へと父は墜落すると、離れた場所で座ったままの私の視界から消えた。
最後に顔ぐらい見ておこうと思って立ち上がれば、それに気づいた七花が、七実の方を向いて、こっちに来るのを無言で待った。
七実が穴の近くへと歩いてくるのにはかなり時間が掛かったが、ようやく穴の縁から中を見てみれば、瞼を閉じたまま動かない父が仰向けに倒れていた。
「埋めましょう」
七実がそう七花に促すと、七花は少し首を傾げながら七実を見下ろしながら見返す。
「もういいのか?」
「なにがいいんですか?」
同じように首をかしげて聞いて見れば、七花は無言の末、「何がいいんだろうな?」とまた首を逆に傾げた。可愛い仕草をする、と七実は少し和む。
七花は脇にどけられていた土を崩すように穴へと落とし始めた。あっという間に父の死体が土に埋もれ、その姿を見るのは叶わなくなる。
全ての土を被せ終わり、穴が山に変貌した所で、七花は迷った末に手を合わせて、一礼した。
拝むなんてそんな大層なことでもなく、それはまるで試合が終わった後に相手に見せる礼儀のような動きに似ていて、私はぼんやりと朦朧とした意識の末、同じように手を合わせて一礼する。ああ、この動きの方が、私達には似合っているのだ。
「姉ちゃん?」
座ったまま動かない私に、疲れて動けないのかと勘違いしたのか、弟はその背の高い体を縮めてしゃがみ込み、私の顔を横から伺ってきた。
「姉ちゃん、もしかして、泣いてるのか?」
私は驚いて掌を目元に当てた。しかし、その指はけして濡れることは無かった。泣いてなどいなかったからだ。
「泣いているように見えたの?変な子ね」
「・・・・うーん」
七花は訝しげな顔で、その大きな手を私の顔へと伸ばし、指先で私の頬を擽った。「泣いているように、見えたんだけど」と心配そうな顔をして言うものだから、逆に私が心配になった。
「泣いてないわ。勝手に私を弱く見せないで。・・・本当に、変な子ね」
「・・・・・・ん」
そっと頭を撫でてやれば、かつて私よりも背が低かった頃の幼い顔が、片目を閉じて擽ったそうに笑った。
可愛い弟。どうして私なんかのために、父を殺す必要があったのかしら。
ぼんやりと行き場を無くした思考は、早く流れる雲のようにみるみるうちに空を覆う赤に喰われていった。
(七七♀)(学園)
後ろから己よりも背の高い妹の体を抱きしめれば、「う、」とぎこちない悲鳴が上がる。可愛げの無いところが可愛らしいのだ。私はくすくすと囁くように笑い、ただ「声を出さないで」と命令されたとおりに口を閉ざしたままの七花のうなじをゆっくりと嘗めた。乱雑に一つに結い上げられている七花の首筋は、昔から快活に外で遊ぶ子だったにも関わらず、あの忌々しい女に似て色が白い。生まれつきだから仕方が無いのかしらと己の病弱な肌の色を回想しながら、七花の体を覆うワイシャツのボタンを上から二つ外す。元々二つ開けていたので四つ分開くこととなり、正面から見ればブラジャーが見えることだろう。
中等部に入った七花がつけているブラジャーは色気もへったくれもないただ白いだけのスポーツブラだ。しかし身長が伸びるのが早いせいか、発育がよく、周りの女子と比べて胸が大きいのを私は知っていた。
「また大きくなったの?」
「わかんない・・・きつい。苦しい」
呟かれる声は疲弊を含んでいる。邪魔だし、動くと痛いし、嫌だ、などと妹はよく愚痴を言う。まずこの歳になって男子と一緒に遊んでいるのがおかしいのだ。まぁ、昔から父に空手なんて教わっていたから、男勝りになってしまったのはしょうがないのだけれど。
ワイシャツのボタンを外したことによって肩口へずらすことが可能になったシャツをするりと落として、形のいい肩甲骨へと舌を這わす。姉の私が言うのもなんだが、彼女はスタイルが良い。ただ痩せているだけの女は腹筋が無いせいで腹が膨れがちだが、七花はそこいらのスタイルを保とうと奮起するモデルの女達よりも日々の運動量をこなしているせいか、腹部も完璧に形が取れている。そのすらりと伸びた背に抱きつけば、へにゃへにゃと困ったような声が七花から零れた。
「ねえちゃん、」
「黙りなさい」
ぴしゃりと叱咤すれば、頭を垂らしたまま「はい、ごめんなさい」と咄嗟に謝罪の言葉が返された。私は肩で笑いながら、七花の体の前へと回した両手で七花のスポーツブラを上へとずらした。柔らかな感触が指先に触れ、七花が「ぁ、・・・・う、うぐ」と何か言おうとして口を噤んだ。一人で百面相でもしてるんだろう。我が妹ながら健気なものだ。
拒否を籠めた声は出されることはなく、代わりに背中がひくりと痙攣する。
押さえ込むように二つの乳房を後ろから掴む。・・・うん、確かに前より大きくなっている。私よりは、・・・まだ小さいようだけれど。
「ね、ねえちゃん、これは、ちょっと」
「黙っててって言ったでしょう。・・・七花、もしかして寒い?乳首、立ってるけど」
「寒いよ!俺、今、上半身裸みたいなもん・・・っ、痛いっ」
ぷくりと立ち上がった突起を、特になんの感慨も無く親指と人差し指の腹で挟んで抓る。喘ぐとかそういう反応はできないのかしら。
とりあえず突起を離してやり、掌で乳房を全体で包み込み、力任せに揉みしだく。成長途中のせいか、七花が絶叫した。
「いっ、痛いっ!半端無く痛いっ!痛い、いたいから、ねえちゃ、お願い、お願いだから、はな、離してええええっ!」
「嫌よ」
ぶるぶると七花の肩が震え、声に涙が混じる。本気で痛いのだろう、彼女のしなやかな腕からとは思えないほど微弱な力で、私の手首を抑えて離させようとする。普段とは思えない脆弱な力で、通常時で離せない私の手を離せるわけがない。
「いた、いたい、う、うあ、ご、ごめんなさい、ごめ、ねえちゃ・・・っ」
悪いことを何もしていないのに七花は謝りだす。この子は私を前にすると謝ってばかりだ。まったく、これだと私がまるで悪い人間のようじゃないか。
私は仕方が無いので揉みしだくのをやめ、あやす様に乳房を優しく包み込んでやわやわと撫でる。「はっ、はっ、」と痛みと恐怖から抜け出せた七花は、肩で息をしつつ体を一旦落ち着かせた。
「な、なんでこんな酷いことすん、だよ・・・っ、ん」
「あら、知らないで今まで私の言うこと聞いてたの?」
それには私も驚いた。とりあえず謝るように大好きなその背中のあちこちに口付けを落としながら、私は平然と答えた。
「七花の悲鳴が好きなの」
(七七♀)(学園)
高校に入学した七花はようやく成長が止まり、170にいくかと思われた身長も168cmで止まったらしい。それでも他の人よりもぬきんでて背が高く、160にも満たない私とは本当に凸凹姉妹になってしまった。しかしはやり彼女の成長は私の予想に反さず、胸はDかEまでいったそうだ。ついに空手をするのも辛くなってきたのか、(しかしこれ以上強くなってしまうと誰も手が出せなくなってしまうレベルまで行っていたので、・・・まぁ彼女が暴漢に襲われるなんて自体はもはや無いものに等しいけれど)彼女は空手をやめた。それでも偶に体が鈍ると言って、家の道場で父と互角に渡り合ってみたりしているのだけれど。
彼女は成長したにはしたけれど顔は昔のままどこかぼやぼやとしている。(私が言うのもなんだけれど)脂肪のついていない体は華奢ととって問題無い程やせている(というか引き締まっている)ので、もう数年もすれば都会の方をうろついていればモデルにスカウトされるんじゃないかと思うほどだ。
彼女は姉の私がもう少し自分の体について気づくべきだと言いたくなるほどスカートが短く、(いや、下にスパッツは穿いているんだけれど)(彼女曰く「動きにくい」)首が絞められるのが苦しいと言って胸元が肌蹴させている。彼女が今まで襲われずに済んだのは、周りの男子がまだ成長期に入っていないせいで七花を見上げていたからだと思うし、(まぁ実際手のつけられないほど強い彼女を力ずくで押さえ込める同学年の男子なんていなかったっていうのも事実だろうけれど)確実にこれから危険度が増すであろう彼女を、入学して一ヵ月後、私はその生活を正そうと身を乗り出した次第でした。(前フリが長かったのは仕様です)
と、いうわけで。登校するための電車の中、私は向かい合って密着した七花の手を掴み、「貴方に教え込まなければいけないことがあります」と言った。
「・・・・・何を?」
私を見下ろしながら七花は首を傾げた。満員電車の中、隅を陣取り七花を壁に背をつかせて向かい合い、既に寄りかかりあっている中、私は小さな声でボケている妹を叱咤する。
「私が何度注意しても貴方は服装を正そうとしないので、これはもしかしたら調教という部類に入るかもしれません。ですが私は貴方を世間に出しても恥ずかしくないような一般知識を教え込む義務があるの。ここまでは分かった?」
「・・・・・・・・、・・・・・・・!こ、ここで何かすんのかよ姉ちゃん!」
七花は声を裏返して、それでも小声で反論してきた。彼女は身を捩って私の手から腕を逃がそうともがいた。
「何を怯えているの?」
「姉ちゃんの言う調教とかってマジで洒落にならないんだって!親父から聞いたけど、小さい頃俺の爪剥いだんだろ!?」
「あら、あれはお仕置き、これは調教。こういう公共の場所がどれだけ危険かってことを貴方に教え込もうとするだけよ」
「え?な、何すんだ?」
七花は少しだけ力を抜いて私に身を任せた。調教って言っているのに私に体を預けるなんて、この子ほんと大丈夫なのかしら?
私は鞄で片手の塞がっている七花の逆の方の手を片手で掴み、そして開いた手で七花の短いスカートの中に手を突っ込んだ。「ひぃっ」と小さな悲鳴が頭の上で上がる。体に密着するスパッツの上から彼女の秘所に指を這わした。(回りくどい言い方をすれば太腿と太腿の付け根の間にあるまぁアソコである)
「ねぇちゃ・・・・っ!」
「片手を押さえつけられてしまえばこうも簡単に触れることができるのよ?スカートが短ければ捲ることなんて殆ど必要じゃないから腕を動かす必要が無く、人とぶつかって疑問に思われる可能性も低くなるのよ」
七花はそんな私の説明を聞いているか聞いていないのか「あ、あ、う」と嗚咽混じりの声を上げて顔を顰めた。恥ずかしさと屈辱で泣きそうなのかもしれない。
私は彼女の肩に頭を埋めるようにして、顔の前にでたシャツの隙間へと舌を這わせた。「ごめ、ちょ、姉ちゃん、なおす、から、」と悲鳴混じりの声が耳に囁かれるがスルー。今まで私の忠告に耳を貸さなかった七花が悪い。
ブラに包まれているせいで乳首を嘗めることはできないが、朝風呂に入っていたせいかまだ石鹸のにおいのする柔らかな乳房に舌を這わせれば、びくびくと肩が痙攣した。三年間の蓄積は確実に彼女に快楽を教えこめれたようだ。私は少し満足しながら、言葉を囁き続ける。
「胸元もこんなに開いてたら前から抱きつかれればすぐこうやって悪戯されるのかもしれないのよ?まったく、恥を知りなさい」
「そっ、それは姉ちゃん・・・!」
最もなことを言った妹がどうにも許せなく、スパッツの上から彼女の恥部を抓り、乳房にキスマークをつけた。「はっあ、ああぁ、」と熱い吐息が私の耳元へとぶつかる。可愛らしくて仕方が無かったが、こんなに弱いと逆に危ない気がして、自分でやってきたんだけれど今までの悪戯の経歴を全て消し去りたくなった。いや、可愛いからこれはこれでいいのだけれど。
「んっ、んっ・・・!」
「ここで盛っちゃ駄目よ。私は貴方が痴女の名前を貰うなんて嫌なんですから」
「だっ誰のせい・・・!?」
つっこみだけはしっかりやってくれる所が素晴らしい。私は手を開放し、彼女のシャツを二つ止めてやった。首が苦しいと言っていたので一つだけ外し、スカートを下へと下げる。
「これでいいわ」
「うっ、うっ・・・姉ちゃんひでぇっ・・・・!」
顔を赤くして目尻に涙を湛えた七花は辱められた処女のようだったけれど、処女はとっていないのでそれはないだろうと自分で考えを直した。
「あと少しで駅だからほら、しゃんとなさい」
「うう・・・」
「ほらね、」
七花をしっかり立たせてやり、私はくるりと上半身を捻って真後ろに立っていた同じクラスの真庭蟷螂に微笑みかける。
「私の妹は可愛いでしょう」
「――――――っ、気づいてるなら、止めてやれ・・・!」
顔を真っ赤にした蟷螂さんはそう一言呟いて顔を背けた。私の七花の淫蕩に溺れる姿を見ておいてなんて言い草。少し憤慨すれば、蟷螂さんの隣に立っていた一つ下の子と目が合った。
確か、真庭蝙蝠―――――。
蝙蝠さんは特に何でもない風に自然と目を背け、椅子に座って不思議そうな顔をしている蝶々さんに笑いながら話しかけた。
「(ここでやったのは失敗だったかもしれないわね)」
私はそう思いながら、「姉ちゃん酷い・・・」と呟く妹の体に自然に抱きついた。
(海亀と誰か)
海亀はいつものように何も無い畳の部屋の中央に座っていた。背筋がぴんと張ってあって、座り方が凄く綺麗で、俺はぼんやりとそれを眺めているのだ。いつものように。
どうしてか、海亀の表情は口では言い表せれないような、そんな凄く透き通っているように見えて、俺はけしてあの人のようにはなれないと思った。あの人は俺より長く生きてるのに、俺より何も持っていないように見えたから。嘘吐きだからだ。十二頭領の誰かが言っていた。
「そこで何をしてる」
「え、あ・・・!申し訳ございません」
海亀は俺の方を見ずに、突然そういった。俺以外に言ったのかもしれないなんて思ったけれど、海亀の意識がこっちに向いているのが嫌でも分かった。出て行かなければ殺されると思った。
綺麗に座ったまま、海亀は首だけで俺を見た。透明度の高い、でも、目の奥は全然濁りきってるその目は、異様に心地が悪くなった。怖かった。しかし、彼に存在を見られるということが誇りのような気分だった。
「お主は・・・」
「蜜蜂さまの弟にございます」
己の姉は現在十二頭領の一人だった。だから俺は姉について偶にこの屋敷へきていたのだ。今日は、なんとなく、この人が見てみたかったから来ただけなのだけれど。
「姉上を探しに来たのですが、何処に居るかご存知ありませんか・・・・・・海亀さま」
海亀はなんとなく面白く無さそうな顔をすると、一笑して体をこっちへと向けた。縁側につったっている俺の正面には、正座をした姿勢の綺麗な海亀が笑いながら存在していた。何もないかのようだった。
「逃げんのか?」
「にげ・・・・・・?」
海亀が何故笑ったのか理解できず、俺はその言葉を小さく口へのせた。次の瞬間、俺の髪は軽く散って、海亀の姿が立った状態で俺のすぐ目の前へと移動していた。
息が詰まって恐怖で足が竦む。しまった。地雷を踏んだ。
「盗み見は感心せぬな小僧。そういう趣味があるわけではあるまい。餓鬼なら餓鬼らしく女でも見とれ」
「あっ、あ・・・・・・も、申し訳御座いません」
俺はとりあえず逃走した。最後まで背筋の通った男がどうにも頭から離れなかった。姉に話すと滅茶苦茶に笑われた。
十二頭領になって、俺は頭領会合の集会やらで毎回あの男を見る。あの男はいつでも背筋が伸びたまま、その見た目に似あわないぐらい、人を馬鹿にして嘘をつくのだ。
それが何故か、一番あの男にあっているような気がして、俺はまだあの男が一人で居るところを毎日のように見に行ってしまう。
2008/4・1