■ブログ短文集

■触手を放置プレイ(兎軋

「おい兎吊木、屍のやつがお前にこれ渡すよう言われてたって――――」
死線から命じられた使いに、ついでに滋賀井からも頼まれたので直接兎吊木を探すため、軋騎は兎吊木のマンション内をうろうろとしていた。ようやく明りがついた一室を見つけたのでそこへ一歩足を踏み入れる。
しかし、反射的に二歩目は動かなかった。基本的に兎吊木の私室はがらんとした病的な何も無い部屋が多いのだが、軋騎が入ってしまった部屋の中央には巨大な異物が存在していた。
ぬめぬめとした透明な液体をぶんぴつしている緑色のグロテスクな植物のようなものが鎮座していて、それは一本一本が意思を持つかのような動きでのた打ち回っていた。中央部は植物の塊なのか一度大きく膨らみ、その下がどうなっているのかは確認できない。
「・・・・・・・」
そりゃねぇよ。
何を言えばいいのかも分からず非現実的なそれを呆然と見据え、軋騎はとりあえず凍結した脳で兎吊木を探すという元の目的へと戻らせた。一度室内をぐるりと見回すが、どこへ目を向けても緑色の触手が目に付いて仕方が無い。
ここの部屋はマンション内の殆ど奥に位置していた。適当とはいえあらかた見終えた後だったので、兎吊木がいるとすれば、と思って入ってきたのでもう探す所も思い浮かばない次第だ。つまり、と軋騎はそこで思考をとめ、問題の触手へと向かい合う。
「お前・・・まさか、兎吊木か?」
「なんでだよ!!」
突っ込みの声は背後から聞こえてきた。
軋騎は肩を竦めながら振り返る。
「なんだ、そっちか」
「『なんだ』じゃないし『そっちか』でもないだろ!!なんで触手と俺同列!?お前には俺が触手に見えるんですか!?」
「髪のうねり具合だとか」
「俺の髪は自立して動かないから!!」
珍しく突っ込みに回る兎吊木を侮蔑するような目で嘲笑い、軋騎は手に持っていたディスクを手渡し、兎吊木が持っていた黒い袋に入れられている死線へ渡すためのディスクを奪う。
「探すのが面倒だったんだ。いいじゃないか別に、あれがお前でも」
「せめて人間と人間を間違えようよ!」



■兎軋(藤下の理想

「なんだそれ」
「チケットだよ」
椅子に座った俺の目の前に、近すぎるほど紙を近づけてきたので、兎吊木の表情も見れなかったし、字面もぼやけて見ることが叶わず、うっかりそんな呆けた質問をしてしまった。
少し離したその紙は、どうやら映画の試写会のチケットらしく、この間一賊の姉が「これ早く見たい」と駄々をこねているのを見た覚えがある。以前一斉を風靡した恋愛映画の監督が作った二作目の映画だった。
「見に行かないかい」
兎吊木はさらりとごく自然に聞いてきたので、俺はまたうっかり「・・・あ?」と良く分からない返答を零した。兎吊木は「高かったんだよ」と呟きながら、にやにやとした笑みを崩さずに、今度はゆっくりと囁いてきた。
「一緒に、見に行かないか?」
「何でだよ」
「たまには男と映画も見てみたいかなと思ってね」
「悟轟でも誘え」
「お前と行ってみたいんだよ、式岸」
差し出されたチケットへもう一度視線を向け、書いてある字面を流し読みする。
「行かない」
「・・・そうかい」
兎吊木は残念そうに、しかし予想通りの返答に満足したようにそう呟くと、二枚のチケットを重ね、両手で持ったかと思うとびりっと半分に破った。
それをもう一度重ねて破る。それをもう一度重ねて破る。それをもう一度重ねて、そして破った。
32枚に分けられた元二枚の紙は、兎吊木の手から零れてひらひら舞いながら床へと落ちた。
「・・・もったいないねぇ」
自分で破ったくせにそう白々しく呟いて、兎吊木は笑顔で俺を伺った。
「ゴミは捨てろよ」
そう言い捨ててやると、兎吊木は「君は本当に容赦が無い」と、どこか楽しげに笑う。俺はその笑顔に吐き気がして、錯乱したチケットを踏みつけた。



■ファンタジーパロディ(死線と軋騎さん

戦火は留まる所を知らない。
大国から切り離された小さなこの国には、武器も無ければ希望も無かった。残されたのは、深海の女王。
大きな玉座に、そのか細い体を縮ませたように身を篭らせて、彼女は正面の巨大なガラス張りから、赤く染め上がる城下町を見下ろしていた。城が落とされるのも、数時間といった所だろうか。
「暴君」
逃亡を促そうと、軋騎は彼女をうかがった。青い女王は、緩やかに「ん?」と首を傾げるだけで、身を捩ろうともしない。
「城が落ちます」
「そうだね」
彼女は笑っていた。軋騎は言葉を無くし、やって来た煩わしい鉄の叩きつけられる音を聞きたく無いとでも言うかのように目を伏せた。その様子を見て、彼女は逆に、そっと扉の方へと視線を向けた。
入ってきた武装した兵士達は、玉座の周りにはたった一人の男しかいないことに一瞬気を抜き、そして玉座に座る人間が少女だというのに目を見張った。
「この国の女王だな?」
「うん」
兵隊長だと思われる、一般兵と違う兜を被った男が、篭った声で彼女に問いかけた。
「大人しく投降するのならば命は奪わん」
「そうなの?じゃ、何もしないよ。・・・ぐっちゃんも、大人しくしててね」
控えていた男も、何も言わずに頭を垂れただけだった。そのあっけなさに言葉を無くし、指揮官は少し苛立たしげに言葉を重ねる。
「一国の主ともあろう者が、なんという無様な姿なことか。恥を知れ」
「一国の主ともあろう者?何か間違えてるよ。王様ができるのは戦うことじゃないよ。纏めること。私の命はこの国に預けてるし、私の愛はこの国の民にあげた。もうできることなんてないし、あげるものも無い。だから私は何もしない。何もできないもの」
彼女はそういうと、緩やかなヴェールを身に纏い、ゆっくりとたおやかに、玉座から立ち上がった。頭の上に乗せていた、不釣合いな王冠を、無造作に玉座の上へと乗せる。
「国は落ちる。私は死んだ。せめて、この国の民をに、ご慈悲を」
年齢に会わないその言葉に、兵士は真摯に受け取ったようだった。一人、控えていた男だけが、その言葉が嘘だと言うことを脳裏で嘲笑っていた。



■兎→軋

犬になった夢を見た。今になって思ってみれば、どうやって四足歩行していたのかどうにも思い出せないが、とりあえず移動するのは別に大変じゃなかった。
自分の犬種もどうにも分からないが、視線は獣のそれで、街の中を歩いていると、ミニスカの女子高生のスカートの中が覗けた。やはり冬だからか皆ストッキングを履いていて、うっすらと透けて見えるパンツがエロテロリストだった。(一週間ぐらいこの状態で生きてもいいかなぁと思えるぐらいだった)
まぁ夢の中で悲しくも少女に出会うことが無かったことだけが心残りだった。俺はどうやら野良犬のようで、人ごみの中を縫うようにして歩き続けていた。(歩いていることに意思は無かった。無意識のうちにどこかへと一心に向かっているようで、とりあえず周りの景色を見ることだけに注意していた)
風は冷たく、秋口に差し掛かるような木枯らしの目立つ日だった。どこだか分からないが、公園のようなところに行くと、式岸がベンチに一人座っていたのを発見した。
俺が寄っていくと、式岸はそれに気がついて、首をこっちにむけた。冷たい風のせいで赤くなった頬と鼻が酷く子供のようで、不覚にも可愛いかもしれないと思ってしまった。
「野良犬、か」
式岸は俺の首元に手を這わして呟いた。なんやら手馴れている。噛まれるという不安を持ち合わせていないようだった。(確認していたのは首輪らしい。何もついていないのを確認した後、すぐに手を離してしまった)(少し残念に思えた)
指を追う様に鼻先を突き出すと、式岸は手を泊めて、荒い手つきで俺の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。特有の優しい触り方ではなかった。
「・・・なんだ、あまり見るな――――――なんか、兎吊木に似た目つきをしてるな、お前」
式岸は笑って言った。そこで目が覚めた。


「・・・・・で?」
「でって言われても・・・犬が犬を撫でるとはシュールだなと思っただけだよ」
因みに撫でてる犬が式岸。
俺がそういうと、パソコンから目を離さない式岸は「夢も碌なものを見ないな」と呆れたように呟いた。
「しかもなんだ、最後の。俺はまともにお前の目なんか見たことねぇぞ。気持ち悪いから」
「うん・・・それは知ってる・・・」



■このおっさん達は本気と書いてマゾです。

「式岸・・・俺この間スカートの下に穿くスパッツは邪道だって言っただろ?」
「言ってたな」
「だが今日・・・駅で女子高生のスカートの下を見てしまった瞬間、その考えを改めたんだ」
「見たのかよ!」
「いや、あれは偶然であって、目の前の女子高生が異様にスカートが短かったからちょっと見えてしまっただけなんだよ。そのときうっかり財布を落として、屈んだのはワザとじゃない。ほんのうっかりとした出来心だったんだ」
「お前それ自白してんの分かってるか?」
「違う、出来心じゃない。出来心じゃなくって・・・ちょっとした冒険心の表れっていうか・・・あれだよ、中身が『ひとくいばこ』なのは分かってるんだけど宝箱が目の前にあったら開けてみたくなる・・・そう、出来心だよ」
「二回目だぞ」
「じゃあ何ていうんだよ!」
「逆切れすんじゃねぇよ!まず31歳になって出来心の意味もしっかり理解できてねぇお前に逆切れする権利はない!!そしてお前のやったことは犯罪だ!」
「サイバーテロリストに今更犯罪がどうとかよく言えたもんだな・・・この年中不法侵入者め」
「少なくとも威張って言う言葉じゃねぇよ馬鹿野郎。確実にお前のやったことは人間として最下層だぞ?分かってるか?」
「人間として最下層でも人間という枠からは決して出ないから大丈夫だ」
「そりゃ生物学上無理だからな・・・だからなんでお前そんなに偉そうなんだ?酒でも飲んだか?」
「俺が思うに世の中のサンタも萌えキャラになり始めている今後、萌え系十二支とかでても問題ないと思うんだ」
「いや、サンタが萌えキャラっていうのはあれだろ?店頭でケーキの販売やってるサンタの格好した女の売り子さんだろう?っていうかお前酔ってるだろ!車で来たんじゃないだろうな!サイバーテロリストが飲酒運転で捕まるとかそんな初歩ミスやったら監獄にぶち込むぞ!」
「今日は一夜同じ屋根の下過ごそうじゃないか」
「泊まりにくるだけなのに無理にロマンチックに言わんでいいだろうが!!」
2007/12・29


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