■ブログ短文集
(零崎軋識)
右斜め下方から抜くように愚神礼賛を振る。前に立っていた男二人が顔を歪ませて引き攣ったような声を上げた。
前の二人を根こそぎに殴り上げ、振り向きながら背後に寄ってきていた人間に、振り上げた愚神礼賛をそのまま振り下ろす。
人間の体三つがごちゃごちゃと絡まりあって肉塊になった。
愚神礼賛の重さで地面に叩きつけられた後もミヂミヂと肉が引きちぎれる音が響く。
上側に開いた男の下半身が重力にともなって斜めに傾きやっと地面とご対面する。
愚神礼賛が男どものスーツにひっかかり、力任せに引き抜こうとすると、釘部分に引っかかって男の頭と内臓がずるずると引っ付いてきた。
くそ、邪魔だ。
面倒くさいが引っ付いた内臓と頭を足で踏みつけて押さえ、愚神礼賛を引っ張る。ぶちぶちと音がしてとても軽くなった。
いきなり背後からの押し寄せる殺気に身を横に動かすする。ぱんぱんぱんと乾いた銃声が三回。己がさっきまでいた場所を銃弾が通過した。
ふと顔を上げると「ひぐっ」と喉を鳴らす男が一人。
慌てて弾を入れようとするがぼろぼろと男の手からどんどんと弾が落ちていく。
先程拾ったナイフを懐から取り出して男に向かって投げつけた。
ナイフは回転しながら飛んで男の顎を割ると喉に穴を開ける。げぶっと太っている人間のするゲップのような音をだすとうつ伏せに倒れた。ナイフの柄が床と出会って男の首に深く刺さる。
「さて・・・・・・問題はここが何処だかわからねぇことっちゃけど」
零崎軋識は麦藁帽子を一度外し、返り血が付いていないことを確かめてから目深に被りなおした。
サンダルは元の色が分からないほど赤く染まってしまっていた。それを見下ろして、ちっと小さく舌打ちする。
彼の赤い眼が、薄暗い建物を紅く映した。
(死線の蒼とぼく)
「まだ、わかんないのかな?」
蒼は呟いた。暗い部屋で。光の射さない部屋で。
まるで深海のようだ。まるで彼女のようだ。
「自ら不幸になろうとする人間なんて居ないでしょいーちゃん。
いーちゃん、いーちゃん、いーちゃん。
大好き。
大好きだよ。ねぇだから、無理はしない方が良いよ。
顔が引き攣ってるよ。
ねぇ、ここにいるとまた呪いかけちゃうよ。今度こそ地獄まで一緒に行ってもらっちゃうよ?
だからさぁ、早く行きなよ。お友達の所に帰ってよ。
もうここにはいーちゃんの座る場所なんて残してないんだから。ぼく様ちゃんの世界にはもう、ぼく様ちゃんしか残すところ、残してないんだから」
「嘘はもう、聞き飽きたよ友」
ぼくは言ってみた。彼女は顔を顰めた。
「お前のことなんか知ったこっちゃ無い。お前が死にたいとか知ったこっちゃ無い。
ぼくはお前を殺してなんかやらない。お前から離れてなんかやらない。頼まれたってするものか。
なぁ、友。
お前の嘘は分かりやすいよ。嘘吐きにはモロバレだ。
お前、自分が何言ってるか分かってるか?」
彼女の本当のことを言わないことは、わからないけれど。
嘘は分かる。
だってお前、嘘を吐くとき、とても嬉しそうだ。
「自分に言えよ。不幸になろうとする人間なんていない、なんてよ。
じゃあお前は人間じゃないのか?そんなわけ無いだろう。お前が一番分かってるだろう。
玖渚友。
玖渚友、玖渚友、玖渚友。
ぼくはお前が好きだ。大好きだ」
ぼくは言う。
「お前が不幸せになる終わり方なんて、ぼくはハッピーエンドとは認めねぇんだよ」
(軋騎と兎吊木)
「死んで出なおして来いやぁあああ!!」
「えっ、戻ってきて欲しいのかい?」
「っー――――――!!!」
(死線と兎吊木)
「さっちゃん。キモい」
「えっ」
「髭が」
「では今すぐ剃ってきます」
「だめ」
「はい?」
「ここで全て抜け」
「・・・・・・・・・・・」
(兎吊木と軋騎)
「−−−−−−−−−っっっ!!!」
「何だどうした兎吊木今日も相変わらずキモイな」
「し・・・・」
「し?」
「死線からのメール消しちゃった・・・・・・・」
「今すぐ首吊ってこいやぁあああ!」
「ごめんなさいそれ俺も思ったぁあああ!!!」
(軋騎と兎吊木)
「冥王星が無くなるっぽいな」
「セーラームーンファンは泣いて悲しむだろうな」
「どうでも良いな」
「ちなみに俺はセー」
「黙ってろぉぉおおおお!!!」
(人識と通行人A)
世の中は危険でいっぱいだ。
例えば人ごみの中、いつ目の前の人間が懐からナイフを取り出して切りかかってくるか分からないし、例えば、家に帰ったら強盗が居たりとかするかもしれないし、例えばビルの屋上なんてにいたら、いつ後ろから軽く背を押されるかもしれない。
もしくは、うっかり路地裏に入ってしまって、銀髪の華奢な少年にナイフを突きつけられることもありえる。
ああ、だから外に出るのは嫌だというのに。
私は頭を垂れて、おろおろと情けなく逃げ道を探す。私が通ってきた細いビルとビルの間の道の前には、ナイフを持った少年が笑って立っている。
ついでに背後には行き止まりのフェンス。錆ついてはいるが、通るなんて私にできるはずもない。
「おっさん、こんな時間にスーツ着てうろついてんだ?かはは、もしかしてリストラとかいう奴?嫌だねぇこんなご時世、どこでいつ、何があるか分かったもんじゃねぇ」
少年はまた笑う。かはは、今起こってることもまぁありえねぇわなぁ、と呟き、右目の下の、顔面の刺青を醜く歪ませた。笑い顔が酷くあどけない。
「あ、もしかして怖い?ま、そうだよなーナイフ突きつけられて余裕なのなんか俺の兄貴以外に思いつかねぇし?」
んー、と少年は手元のナイフのグリップでがりがりと頭を掻いた。きひひと誰かの真似をするかのような、思い出したような笑い方をして、一瞬のうちに私の目の前に立つ。
「あ」
「おっさん、いい言葉教えてやんぜ。恐怖ってのは先のことを予想するから怖いんだと。この後死ぬだろうなーって想像しなけりゃいいんだ」
ひゅっと風を切る音だけがした。目の前がゆらゆらと霞む。
私は思考を止めた。酷く頭が冷えた。
(兎吊木と軋騎
「よし、これから俺はあのいたいけな顔してお遊戯の曲を合唱している幼稚園児を先回りして草むらから写真とってくるよ。そして背丈が似ているような子を選りすぐって俺の全身全霊をかけた死線の蒼のアイコラ作ってくる」
「うっぜぇなボケ!近頃てめぇ存在からして痛々しいんだよ!身分を弁えろやハゲグラサンが!」
「なっ、何を言うんだ式岸!お前まさか・・・死線の蒼が幼稚園児の着る制服着ているのが見たくないっていうのか!?頭おかしいんじゃないか!?」
「おかしいのはてめぇの脳髄だよ!」
「あっ、なるほど!あそこの制服より私立の保育園の方が良いって言いたいんだな!?」
「どこらへんが「あっ、なるほど」なんだよ!一つたりとも理解してねぇじゃねぇか!さっきの清清しい顔を消してこいや!」
(チーム会話)
「そういやこの前アメリカに居る知り合いから聞いたんだけど・・・」
「変な奴も居たもんだなぁ」
「・・・・・・はっ!」
「うおっ」
「・・・・・・どうした兎吊木」
「今俺のパソコンに死線からメール届いた」
「どうやって電波受信してんだよ!」
「何だ、羨ましいのか?ふふん」
「なっ・・・わ、私だって本気を出せば死線からのメール、察知できるわよ!」
「張り合って人外の道に踏み出す必要はないと思うぞ・・・?」
「ふっ、甘いわね二人とも、私だって頑張れば、死線がいつ私の名前を口に出したか分かるわよ!?」
「いつからここは超人の集まりになったんだ?」
「超人の集まりというかむしろ、変態の集まりじゃないかな、街」
2007/8・01