■強さから生まれたものと、

 例えばあのの翡翠の目に、ちょっとだけ蒼が差しているのを知ってっか?金色の前髪がちょっとだけ掛かる意思の強そうな太い眉、その下にある眼球の、その綺麗な碧と蒼の色。
 あと、オラが顔を近づけると、最初ちょっとだけ押されるみたいに身を引くんだ。そのあとすぐに体を戻さないと、一瞬だけキスを狙ってくる。オラも逃げるから、掠るようなキスだ。触れたかな、って少し不安になるぐらいの速さで。その時、勢いでオラの前髪があいつの目に当たりそうになるから、あいつはそのキスするとき目を瞑る。女みたいで笑えんだ、これが。
 あと、隣に座ってっと、絶対に手を握るか肩をこっちに押し付けてくる。手を握るときはオラをどこにも行かせたくなくて、多分寂しいんだと思う。肩を押し付けてくるときは、多分喧嘩した後。オラがまだ怒ってるか、ちょっと気にしてる。オラはもう怒ってねぇよ、ってその肩ごと、あいつの体重を支える。そうすっと、頭を肩に乗せてくる。緊張が解けて、多分眠くなってるんだ。
 これは、多分他の奴らが知らねぇと思う、オラだけの秘密。多分、あいつも自分で気づいてねぇんじゃねぇかなぁ。だってずっとやってるし、もしかしたら、直すつもりがねぇだけかもしんねぇけど。

 そうだなぁ、・・・隣に居るときにあいつの顔を見てると、すぐに気づいてオラを見るんだ。そんで、一回、「どうした?」って聞いてくる。それにオラが「なんでもねぇよ」って答えて、にかって笑うんだ。・・・え、だってなんか、はずかしいじゃねぇか。まっすぐ、じって見てくっから。あ、で、そんでもってさ、オラが笑うと、それにつられるのか分かんねぇけど、ちょっと笑う。にかってのじゃなくて、ふっ、って息吐くみたいに。目尻が少し下がって、口が緩むんだ。んで、その後ぽん、てオラの頭を・・・撫でるっちゅうか、手で一回押さえる?っちゅうのかな、叩く・・・のか、とにかく手をオラの頭の上に一回乗せんだ。
 そうだな・・・あとは、赤いのの方が詳しいんじゃねぇかな。あいつは、なんか見守ってる感じがすんだ。少し離れたところで。でも、オラたちから離れてる感じはしねぇんだ。だってずっと一緒に居るしよ。

 なんかオラが嫌なこと考えてっと、いつの間にかやってきて、オラの頭をぐしゃって一回撫でる。撫でるっていうにはちょっと乱暴すぎる気もすっけどよ・・・。なんだよ、オラだって色々考える時ぐらいあるぞ!・・・そうだな、オラたちって、根っこの所で繋がってんじゃねぇか。たまに、あ、オラたちやっぱりおんなじもんなんだ、って思うことあるし。で、オラがそうやって嫌なこと考えてると、皆来てくれるんだ。すぐ来れないときがあっても、少しして会った時に、さりげなく「大丈夫か」って聞いてくれっし。でも、大体、あいつが一番早いかもしんねぇ。でも、何も言わねぇんだけど。ほんと、ただふらっていつの間にかやってきて、頭撫でるだけなんだ。ぐしゃっ、て。でも、オラ、それでなんか、元気でるんだぁ・・・。・・・ああ、そう、確かに、父ちゃんみたいかもな。言ったら怒られっかもしんねぇけど。あ、これはあいつには内緒な?多分今度こそ殴られちまう。



 いい匂いがするんだ。・・・なんだよその目は。あ、飯の匂いって訳じゃねぇぞ。なんか、まぁ、落ち着く匂いっつーか。多分、俺たちの中で一番地球人って奴に近いからじゃねぇかな。その匂いが心地よく感じるってのは、サイヤ人としては駄目かもしんねぇけど。
 笑ったときの声と顔と、空気が好きだ。見ててこっちが幸せになる、ってああいう奴のことを言うんだなーって思う。・・・不意を打ってキスすると、顔真っ赤にして口ぱくぱくさせんのとか、可愛いと思う、かな。怒鳴ってくんのも好きだ。たまに、舌を入れると自分から絡めてくるのも好きだ。あと、多分自分じゃ気づいてねぇかもしんねぇけど、キスし終わって顔を離したとき、少しだけ残念そうな顔するんのがたまんねぇ。普段あんなアホっぽいくせに、ちょっと気を抜くと見たこともない顔するのもいい。あと耳が弱い。
 ・・・いいじゃねぇか惚気たって。愛する自分自身だぜ?可愛くないほうがねぇよ。あー、あところころ表情が変わるのも好きだ。怒った顔も好きだし、泣きそうな顔も好きだ。っていうかもうあいつが好きだ。必死な姿とか、守ってやりてぇって思う。

 あー、例えば、俺が悟空の奴を困らせまくってると、怒る。口には出さないんだけど、心の中に直接、言葉にしないで圧力掛けてくるんだ。まぁ、ほどほどにして置けよ、みたいな。まぁ自分のことだから怒るのは当たり前だしな。それにあいつってよくガキ相手に遊んだりしてんじゃねぇか。悟天とか、トランクスとか。過保護ってわけじゃねぇけど、心配性なのかもな。いや、そりゃねぇか。俺もあいつも変わんねぇし。まぁ、つまるところ、皆悟空が大好きなわけだ。

 あいつ・・・いやもう何も言わねぇわ。何か・・・気のせいだといいんだけど、俺標的にされてないか?・・・あいつ・・・ああ、くそ、もうどうでもいいや。あの余裕有り気な態度がムカつく。俺たちってどこか似通った部分があるけどよ、俺あいつとはあんま似てないと思うんだよな。俺あそこまで調子乗ってないし。・・・・・なんだよ。



 やっぱり、こいつから派生したんだな、俺は。って思う。っていうか俺達は大体同じ年齢だと思うんだけどよ、あいつどう考えても若々しすぎる・・・っていうか頭の中は子供のままなんじゃないかって思うときがある。いくらなんでも・・・いや、俺もあいつと同じだし、下手なことは言わないことにする。
 見てて楽しいぞ。自分の基となる奴としては、こう言っちゃなんだがあいつでよかった。
 ・・・そうだな、あと、あいつよく俺に抱きついて来るんだが、何故か後ろからばっかりなんだ。どうしてだと思う?

 俺やあいつ・・・とまでなると、どっちかといえば悟空よりカカロットに近い性質があるんじゃないか?サイヤ人だしな。
 そうだな・・・悟空やカカロットが気づいてるかどうかは知らねぇが、悟空が俺の近くにずっと居るときとか、察知してすぐ来るんだ。何でだかはしらねぇけど。あとあいつに悟空が抱きついてる時とか少し隠れてそれを見てる。羨ましいならカカロットも行けばいいのにな。恥ずかしいんかね。

 掌で弄ばれてる気がする・・・。あいつはよく俺をおちょくるというか挑発するというか・・・いや、挑発ならカカロットにもやるんだが、すぐ首元を撫でてくるのが、凄くくすぐったい・・・。ぞわぞわするんだ。しかもわざとなんだろうが、俺が本気を出したら逃げ出せる程度に拘束を緩めてんのが・・・。性格一番悪いんじゃないか?
 あと何でかはしらねぇけど、何かと服を破く。気が短いんだろうと前は思ってたんだがよ、あいつ全身でなんかこう・・・余裕ありますっていうオーラ出してるじゃねぇか。いや、俺もよくわかんねぇんだけど。
 あいつ、普段から上半身裸だからって・・・。あと?さぁ・・・あ、よく俺の額にキスするんだが・・・あれは癖なんかな?・・・他に言うことなんてねぇぞ・・・。



 俺の体温が高いとか、毛がぬくぬくしてるとか言ってよく抱きついてくるな・・・。あとあいつにも抱きついてるみたいだったから俺に抱きつけって言ったのもあるかもしれねぇ。・・・あいつ、悟空の奴が抱きついても特に抵抗しねぇくせに、俺が抱きつくと必死に嫌がるんだぜ?傷つくよな・・・。あ?あいつじゃなくて悟空?ああ、悪い悪い。
 誰にも愛される奴ってああいうのを言うんだなぁ、と思ったな。派生したのは俺が一番後だけどよ。俺が知ってるのは短ぇけど、あいつを嫌ってるのなんてあいつに倒された奴か、世界滅亡を企んでる奴ぐれぇじゃねぇか?愛される馬鹿っつーか・・・あ、馬鹿は余計か。
 ・・・・・・へぇ、悟空の奴が俺のことを父ちゃんって?ほぉ、ふぅん、じゃ、後で御礼言いにいくか。

 なんか警戒心むき出しの小動物っていうイメージがあるな、カカは。なんで俺のことあからさまに嫌がるんだかね。俺だって傷つくってのに。そう見えない?ポーカーフェイスだからじゃねぇか。
 別に苛めてもなんもしてねぇよ。まぁ・・・悪ガキって感じだから、なんとなくおちょくりたくなるけど・・・。
 俺だけが知ってる秘密って・・・新参者なんだからそんなねぇよ。まぁ、悟空とかの記憶はあるけど。ああ、そうだな、脇腹が弱い。

 一番関わりてぇ、っていうか、あいつなんか一人だけ精神的に上そうじゃねぇか?俺が気づいた時には悟空とカカが馬鹿騒ぎしてるのを傍観してる立場っていうかよ。守る場所に自然とついてるんだな。まぁ、俺が出るまではずっとあいつが一応一番強い位置にいたからそうなるのはしょうがないかもしれねぇけど、今はもう俺だし。あいつの立場を奪っちまったって言えばそうかもしれねぇけど、奪っちまったもんはしょうがねぇし、俺があいつごと自分たちを守るさ。それぐらいは分かってる。
 あー・・・そうだな。とにかく俺達には珍しく冷静なのかもな。まぁ所詮悟空だし、そんな冷静って訳でもねぇけど。
 んー・・・噛み癖があるかもな。両手両足が通じなかったら次にすぐ噛まれるのはもう学習した。肩とか多分、毛が無かったら噛み跡ぜってぇ残ってる。内出血もしてるかもしんねぇ。犬歯が鋭いかもしれねぇな。あと、髪が長いせいかうなじが弱い。
 あと何か・・・そうだな、抱きしめると手がどこにやればいいか分かんなくて、少しうろうろして、結局降ろされるな。背中に回されたことなんて・・・一回か二回しかねぇんじゃねぇのかな。あとキスしても自分から舌出すことはほぼ無い。やり方を覚えねぇっていうか、俺達の中で一番疎いんじゃねぇか?多分、戦うことしか脳にねぇんだろうな。





 「変なのぉ」
 ぺらぺらとメモした用紙を捲って、白いのが言った。さっきお父さんたち一人一人に何か色々聞き歩いてたみたいだったけど、何をしていたんだろう。僕がソファに座ってそれをじっと見てると、感情の変化を察知したのか、見る?と彼の白いメモ用紙を寄越された。差し出されたままにそれを見ると、お父さんたち個人に対して他のお父さんのことをどう思うかっていうのを聞いてまわってたみたいだ。
 「元は同じなのに、凄く違う感じがしない?」
 「自我があるからじゃないかな。生き物って種類が同じでも、経験や周りの人間の変化によってすぐ変化に順応するから」
 僕らも、同じだけれど、全然違うよ。僕が区切るように言うと、ソファの上でごろごろしながら白い彼はふうん、って不満気な声をあげた。僕の説明が納得できないらしい。
 「じゃあ、僕らも大きくなって、周りがどんどん変化して、僕らも変化すれば、どんどん違うものになっちゃうのかな」
 「多分ね」
 「寂しいな。ねぇ、君は寂しくない?」
 白いのはクッションに顔を埋めて言った。泣いているのかもしれない、って思ったけど、そんなのは感知できなかった。
 「どんなに違っても、僕らは結局孫悟空の息子で、ピッコロさんの弟子の孫悟飯だもの」
 「君は強いなぁ」
 そうだね、僕は孫悟飯の中で一番強い。今はね。僕の意思を汲み取って、白い僕が少し顔を上げた。これから必要なものが全て力だとは思えないんだ。僕は意地が悪いから、きっといつか、何もかもを無くす日が来るんじゃないか、って思うんだよ。
 僕の翡翠の目が僕をじっと見ていた。何か怖いの?不思議そうなその視線に、僕は頷くように頭を足に押し付けた。
 お父さんたちのように僕らはまだ一人で生きていけない。お父さんたちが分かれたのは、お父さんが強くなるためにそれを望んだからだろうけど、僕らは戦いから逃げたくて分かれたんだ。圧倒的なその違い。僕らはずっと逃げ続ける。
 「僕は僕たちが好きだよ」
 駄目なんだ。それだけじゃきっと大切なものをなくしてしまう。お父さんたちみたいになりたい。優しい白いのが僕の頭を撫でてくれた。優しさに甘えてるだけじゃどこにも行けないことぐらい、僕だって分かってるはずだ。
 お父さんたちの言葉を記したその自らに対する愛の記されたそのメモ帳がソファの上に落ちた。拾えるはずがない。僕は泣いていた。
2009/4・4


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