■グレラガ log2
 「なぁロシウ・・・巷でよく言われてるKYの意味って知ってるか?」
「・・・KY・・・ですか・・・・・ああ、危険予知ですね?」
「いや、違うだろ」
「何言ってんですか。危険予知の略称ですよ?」
「・・・・空気読めないって意味だったんだけど」
「使い方を間違えてます」
「・・・本気か?」
「本気です。知らないんですか?」
「・・・それ信じていいのか?」
「僕が嘘をつくと思ってるんですか?」
「――――――危険予知、なのか」
「危険予知です」

父が言ってた。その場の冗談だったのかそれとも本気か。今寝てるから聞けない。

「シモンさん、どうして苗字をつけないんですか」
「・・・よく考えてみろよ。地元の名前だぞ?地元の奴らみんななんだか・ジーハになるんだぞ?」
「それがどうしたんですか?」
「俺ロンから聞いたんだけどさ、同じ苗字の人って、昔は親類に値してたらしいんだよ」
「何か問題でも?」
「そりゃ、お前はギミーやダリーと同じ苗字で、親類でも問題はないだろうさ。むしろオールオッケーだろ?アイラックとキッドも同じ苗字でも、ダヤッカとリーロンが同じ苗字でも、別にいいだろうさ。でも、でも俺、村長を家族とは思いたくないっていうか」
「苗字が同じになるだけでしょう・・・昔は親類の意味を持っていたとしても、今は関係ありませんよ」
「でもなんかやだ・・・グループ分けされてるみたいで。それに、アニキは・・・・・カミナのまんまじゃん」
「・・・それは、しょうがないでしょう」
「でもさぁ今更苗字がついたところで意味無いだろ・・・村に戻ることなんて、(多分)無いだろうし」
「へりくつばっかり捏ねないで下さい・・・。どうでもいいことにばっかり脳味噌働かせて・・・」
「まぁ、書くのも面倒だし、別にいいだろ」
「はぁ・・・」

 七年後 2007/11/10



「ね、ニアの好きな人の話をしてよ」
「私も、友さんの好きな人の話、聞きたいです」
「僕様ちゃんはやだよ。だって恨みごとになっちゃうし、すぐのろけちゃうもん」
「のろけってなんですか?」
「好きすぎて良い事しか喋れなくなっちゃう、みたいなのだよ。僕様ちゃんはね、いーちゃんの悪いことはなんも言えないからね」
「いーちゃんさんが大好きなんですね!」
「うん、大好きだよ」
「・・・・シモンは、たまに、アニキさんのことを話すと暗い顔をしますが、とっても強くて格好よくて、皆シモンのこと、大好きなんです」
「うん、いーちゃんも皆に好かれるんだよ」
「・・・その、友さん」
「ん?なになに?」
「皆がシモンのことを好きでいるのを見ると嬉しいですけど、ちょっと胸が苦しくなるんです。なんででしょう?」
「ニアはシモンが誰かに取られるの、やなんだ?」
「・・・とられる?シモンはシモンのものです」
「でも、シモンが誰かを好きにならないか、不安なんでしょ」
「・・・それは、そうかもしれません。わたし、なんて嫌な人なんでしょう!」
「ふふふ、ニアは可愛いね。不安がらなくても、シモンはニアのこと大好きだよ」
「・・・?どうして?」
「勘。多分外れてないから、大丈夫だよ。ぶいぶい」
「友さんは、いーちゃんが誰かを好きになっちゃったりとかしないかって、不安になったりしないんですか?」
「しないよ。いつだっていーちゃんは皆大好きだもん。だから、いーちゃんは僕様ちゃんのことも好きなんだよ」
「・・・・特別になりたいって、思わないんですか?」
「特別?」
「愛してほしい、とかって・・・前リーロンさんに聞きました」
「誰だか知らないけど・・・んー、別に、いーちゃんが僕様ちゃんのこと好きだとしても、きっと無理だから」
「何が無理なんですか?」
「全部」
「全部?」
「そうだよ。僕様ちゃんは、全部許されないから、全部駄目になっちゃうんだよ」
「???」
「ニアは、幸せになれるよ。シモンって人は皆救えるような人だろうから」
「友さん?」
「ニアは、シモンを信じてればいいんだよ。そして、手を離さないでいればいいんだよ。きっといーちゃんは、僕様ちゃんと手なんか繋いではくれないだろうけど」
「そんなことないです!」
「ん、手は繋ぐかもしれないけど、でも、無理だよ」
「友さん」
「それじゃあ、世界の終わりにもう一度。おやすみなさい、ニア」

世界の果てで死線は彼女を越えさせはしない。

 死線とニア 2007/11/08
2008/12・29


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